副業・兼業者の雇用保険

労働力人口に占める65歳以上の方の割合は令和2年度で13.4%と年々増加しており、65歳以上で会社に雇用されている方も年々増加しています。
65歳以上の方の雇用としては、短時間労働(1日4時間、週20時間未満程度)を多くお見受けしますが、中には複数の会社に雇用されてそれぞれ短時間労働で働かれている65歳以上の方もいらっしゃいます。
この度、複数の会社でそれぞれ短時間で働く65歳以上の方が雇用保険に加入できる制度が新設されます。
本日は、その点について考察をいたします。

複数の会社での労働時間を合計することで週20時間を超える場合、65歳以上の方は雇用保険に加入できるようになりました

 雇用保険は、1つの会社での労働時間が週20時間以上となる場合にその会社で加入しなければなりませんので、例えばA社とB社で週19時間ずつ働いていても、会社が異なるので雇用保険に加入する必要はありません。
 この度、65歳以上の労働者の方が複数の会社で働いており、それぞれの会社ごとの労働時間が週20時間未満でも、それらを合計して週20時間以上となる場合、労働者本人が希望すれば、雇用保険に加入できるようになります。
 この制度(「雇用保険マルチジョブホルダー制度」)は、令和4年1月1日から施行されます。
 適用要件は以下の通りです。
 ①複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること。
 ②2つの事業所(1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満であるものに限る。)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
 ③2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること。

手続きは加入を希望する本人が行います

 この新制度は通常の雇用保険とは異なり、要件を満たすと必ず加入しなければならないわけではなく、65歳以上の労働者の希望によりますので、加入手続きは労働者本人がハローワークにて行い、その日から「マルチ高年齢被保険者」となります。
 この手続き書類には事業主記載欄があり、本人からの記載依頼に事業主は速やかに応じなければなりません。
 雇用保険の保険料は、通常の雇用保険と同様の料率で、本人と事業主が折半負担する点も同様です。
 また、事業主は、労働者がマルチ高年齢被保険者となる手続きを行ったことを理由として、解雇や雇止め、労働条件の不利益変更など、不利益な取扱いを行ってはならないこととされています。

近い将来、65歳未満への適用も見込まれます

 厚生労働省によると、この新制度は、65歳未満の労働者への適用のための試行的なものと位置付けられており、施行後5年をめどに効果を検証するとされておりますことから、近い将来、65歳未満で短時間労働を掛け持ちする副業・兼業者についてもこの新制度の適用が見込まれます。
 また、雇用保険だけでなく、社会保険(健康保険・厚生年金)への拡大も可能性が予想されます。
 なお、社会保険の加入義務の拡大が続くなか、短時間労働者に対する社会保険への加入ライン(労働時間が週20時間以上)の適用が、令和4年10月からは、「従業員が100人を超える事業所」に改正されます(これまでは500人でした)。
 そのため、加入ライン未満の短時間労働者の活用も考えられますが、今後の制度の動向に注視が必要となります。

従業員の方の雇用保険についてご不明な点などがございましたら、ぜひ弊所へご相談ください。

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