副業・兼業者の労働災害

複数の会社で働く労働者(複数事業労働者といいます)は増加している状況にあります。
そのための環境整備として、令和2年9月に複数事業労働者に対する保険給付が創設されました。
本日は、この保険給付の一つである複数事業労働者休業給付について、考察をいたします。

複数事業労働者休業給付が創設されました

 例えば、Xさんは、午前中はA社で倉庫作業で働き、その後に午後からB社で事務作業で働いているとします。
 このXさんは、A社での就業中の事故で足を負傷し、治療のため10日間入院することになりました。
 仕事による負傷の治療中で労働することができない期間について、これまでは負傷の原因の事故が発生したA社での賃金についてのみ労災保険から休業補償が支給されましたが、新たに複数事業労働者休業給付が創設にされ、これにより、事故が発生していないB社での賃金も労災保険により補償されることになっています。

「労働することができない」とは

 Xさんは、治療中で労働することができない日の賃金について、A社だけでなくB社での分も労災保険から休業補償が支給されますが、「労働することができない」とは、「一般的に働けないこと」をいいます。
 この「一般的に働けないこと」 は、具体的には、Xさんが、A社でもB社でも働けない状態であることをいいます。
 このため、退院したXさんが、A社での倉庫作業はまだできないが、事務作業は身体的負担が小さいためB社での事務作業で働いた日は、B社で働けているので、「一般的に働けないこと」に当たりません。

B社で働いた日にA社での休業補償を受給することはできません

 したがって、XさんがB社での事務作業の仕事で働いた日は、「労働することができない」とは言えないため、ケガの状態によりA社での仕事はまだできないとしても、A社での賃金は補償されません。
 このように、複数事業労働者休業給付では、一方の会社の仕事で働いた日は、他方の会社の仕事を休んでも休業補償を受給することはできませんので、例えば、短時間の副業で就労したために、賃金が高い本業の休業について休業補償を受けることができなくなってしまう不利益が考えられ、注意が必要です。

※ただし、一方の会社で働いたものの、他方の会社は通院等のために休んだ日の場合は、「労働することができない」と認められることがございます。

従業員の方の負傷についてご不明な点などがございましたら、ぜひ弊所へご相談ください。

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